らなる堂

音楽

ここ何ヶ月かの記録#2

意味もなく深夜まで起きているのは百害あって一利なしなのでやめましょう。なんでもいいから自分の思ったこととか感じたこととかを文にするリハビリ(?)でもすれば少しはコミュ障も改善されるかと思ったんですけど、こうやって時間をかけて文を作るのと、実際に人に会って話すということは経る過程が違うのであって、あんまり意味ねえなコレと思いました。デリダみたいな話ですね(適当)。

 

Jim O'rourke / All Kinds Of People -love Burt Bacharach-

ジム先生監修のバカラックトリビュート集です。ジム先生も演奏に参加してます。一曲歌ってます。バカラックの音楽は日常に忍び込んでおり、「あっこの曲かあ!」みたいになることが多い...と思ったんですけど、わしは"Close to You"しかわかりませんでした。超クラシックな存在を抜かしていることがよくわかりました。ジム先生のバカラックのカバーは名作Eureka収録の"Something Big"がありますが、あそこまで完コピではなく、ゲストミュージシャンの感性を生かした出来になっております。世界の細野晴臣歌う"Close To You"から至福です。次の"Always Something There To Remind Me"はSonic Youthのよしみかわかりませんがサーストン兄貴ですね。Sonic Youthよりかはソロ活動でのアコースティックなアプローチに近いでしょうか。まあバカラックでノーウェーブ感丸出しじゃどうしようもありませんしね。味のある歌唱です。坂田明先生と最近ムロツヨシっぽくなってる中原昌也先生参加の"After The Fox"は面白い。坂田明先生の語りが非常に面白い。中原昌也はコーラスに回っておりますが、ジム先生と一緒に歌ってるせいで判別が難しい。青山陽一先生歌う"You'll Never Get To Heaven"も良いです。コレ聞いて彼のCDを集め始めました。間奏とアウトロに入る音数の絞られたスライドギターがしぶい。

さて、このアルバムの難点はB面がやや地味ということです。個々の曲のアレンジはもちろん違いがあるのですが、"Do You Know~"から"Raindrops Keep~"とテイストの似通った曲が並んでおり、どれも普通に良い曲で、無難に歌が上手い方を起用しているのでその無難さがちょっと退屈ではあります。面子が面子なだけにしょうがないかもしれませんが。

その3曲を抜けるとYOSHIMI姉貴歌う"Say A Little Player For Me"です。この曲はすごいですよ。ハツラツと歌うYOSHIMI姉貴。Boredomesで奇声をあげラッパを吹き鳴らしていたYOSHIMI姉貴はいずこへ。そして後半は心地よいアコギのアルペジオと柔らかなノイズの饗宴です。金属音やパーカッションの演奏はドラム怪人グレン先生によるものですが、一発録りらしい。どうかしている(褒め言葉)。

ジム先生が自ら歌う"Planes Boats And Trains"はなんとなくイーノの空港音楽とかR.E.Mの"Airportman"を彷彿とさせるアレンジです。リヴァーブかけたピアノのせいでしょうか。他の曲と比べるとかなり無機質なアレンジですねえ。

地味な曲もありますが、全てはゲストミュージシャンの歌の魅力を引き出すための策なのでありましょう。歌の入った作品ではアバンギャルド性が控えめになるジム先生らしいです。ジム先生とミュージシャン間の交流も垣間見られるようで面白いです。

 

 


OTOMO YOSHIHIDE INVISIBLE SONGS / SORA

あまちゃんOSTを除けばTSUTAYAに置いてある大友先生の作品はこれくらいでしょうか。渋谷とか行けばもっとあるかもしれませんが。サントラ、ジャズ、ノイズと多様な活躍をなさっておられ、良い曲が作れるノイズミュージシャンというほぼ最強の立ち位置におられる大友先生ですが、今作はボーカル中心の作品です。しかしながらボーカルといってもまともなボーカルなんて"Sora"と"自殺について"(導入部だけ)くらいです。それ以外は絶叫、先生自らの語り、"Banka-La"におけるSAN値ゼロ状態の山本精一先生による歌唱など。SAN値ゼロ状態の山本精一先生の歌唱は彼のソロアルバムでは聞けないので貴重です。

演奏はナスノミツル先生と芳垣安洋先生の鉄壁のリズム隊が構えておられます。Alfred Harthという方がサックスを吹いているようです。こちらもなかなかの絶叫っぷりです。

非常に爽やかなジャケットのアルバムですが、このイメージに即しているのは"Sora"くらいです。この曲では大友先生がロックの語法に忠実な演奏をしていて面白いです。この後の曲ではノイズ炸裂なだけに。15分弱の"スイカを持って死んだ男の夜/ラジオのように"は、ラジオ等によるノイズコラージュから一変してBrigitte Fontaineの"ラジオのように"の主題を破壊/再構築しつづけるフリージャズセッションへ。ナスノミツル先生と芳垣安洋先生はこの手の半即興セッションにおいて最強のコンビなのでは。堅実なリズム隊の上で大友先生のギターと切り刻まれたかのようなAlfred Harthのサックスがのたうつ。近藤達郎のエレピが電化マイルスっぽさを醸し出す。迫力の15分弱。

"Watermelon"はダブです。ここでもAlfred Harthのサックスが炸裂しとりますが、"スイカを持って死んだ男の夜~"の後だとやや地味か。ワウギターの奏法は参考になるかもしれません。お家芸フルアコ+U字型金属によるノイズの"センチメンタル・ジャーニー"に続く "自殺について"は今作のもう一つのハイライトでしょう。鉄の雨が降りしきるような絶望の音楽です。

こんな感じで大友先生のエッセンスがぎっしりと詰まった作品です。楽しいサントラばっかつくっとるんちゃうぞ、ほんとはもっとすごいことやっとるんやぞ、ということを嫌というほど理解していただけるのではないかと思います。大友先生の"真"の入門版かもしれません。たぶん今作でカバーしきれてないのはFilamentなどの静寂なフリーインプロの活動でしょうか。こちらもぜひ。