らなる堂

音楽

聞き物(2022/6/26時点でSpotifyにないもの)

Spotifyには加入しているのですが、近所にCDも借りれる図書館があるのでそこでSpotifyで聴けない音楽を漁るという意味不明なことを繰り返しています。

しかしながら、ここの住民のモラルが欠けているのかCD盤面が激しく傷んでおり音飛びしまくりというCDにも何度か出会っており、遭遇するたびがっくり肩を落としております。CDは丁寧に扱えって親から教わらんかったんか。

 

山本精一&Phew - "幸福のすみか" 

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山本精一先生が初めて歌声を解禁したアルバムとして有名ですね。近年の先生の職人技ギターサウンドを期待するとだいぶ肩透かしかもしれません。伴奏はスカスカだしPhew先生の歌い方も妙にクセがありますし、私もしばらくは耳が不幸せな感じを覚えながら聴き続けていたアルバムでした。しかし、この「耳に入ってこない」ことを楽しむアルバムでもあるんだと思います...(意味不明)。「飛ぶひと」なんかかなり虚無的な歌詞だし、「ロボット」「そのうち」もみんなのうたみたいな雰囲気を醸しながら不気味さが拭えません。でもこのネガティブな感じがすっと心にはまる(でも耳はまだなんとなく違和感を覚えている)時がくるのですよねえ...「鼻」の「もう生きたくないけど だけど死にたくもない」という歌詞なんて素晴らしすぎます。伴奏の朴訥さもやっぱこれじゃなきゃありえないな...という気持ちにさせられます。

 

ゆらゆら帝国 - "Are You Ra?"

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ドラムが柴田一郎に交代した後もよくライブで演奏されている曲が含まれているアルバムです。石原洋さんがプロデューサーとして関わったのもこのアルバムからで、これより以前の妖怪歌謡ロック路線からはだいぶスタイルが変わっているのではと思います。

「グレープフルーツちょうだい」はこのアルバムのが原曲で、メジャーデビュー後もベスト盤に再録されてますが、ギターが大人しめの割にボーカルにドスが聴きまくっていたり挙句の果てには演奏すらもズタズタにされたバージョンが収録されているので、この版に収録されている坂本さんが変なテンションで歌ってるバージョンがあまり聞かれないのはもったいないですね。

全体的にベースは控えめ(てゆーか次作がデカすぎ)でアレンジもスカスカですが演奏はやはりしっかりしており、ヨレた坂本さんのギターワークは感涙ものです。

 

Prince - "The Black Album"

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Spotifyではなぜか「Cindy C.」「2 Nigs United 4 West Compton」だけ聴けるというよくわからないアルバムです。

基本ファンクと書いてあるものにはだいたい喜んで飛びつく僕ですが、プリンスおじさんだけはいまだに魅力がよくわからない。スガシカオとか岡ちゃん(未聴)にはモロ影響与えてるのはわかるのですが。世に言うファンクってこんな縦ノリなの!?っていつも思ってしまう。でもかのJBだって縦ノリの権化みたいな曲が多いし、この辺はわたくしのファンクの認識違いかもしれません(スラップベースさえ入ってたら「ファンクだ!」とかって決めつけちゃう方もいらっしゃいますし、何らかの伝播ミスがあるのかもしれませんね)。

このアルバムはプリンス特有のコテコテバラードとかロカビリーっぽい曲が無いのが逆に聴きやすいです。相変わらず音は80年代全開のリンドラムにシンセですがそんなにダサく感じない。

これ聞いた後に十年前ぐらいにツタヤでレンタルして音源だけダウンロードしたけど大して聞いてなかった"Sign O' The Times"もだいぶ聴けるようになりました。相変わらず「Play in the Sunshine」とか「Slow Love」はうーん...て感じでしたが。そういえば先日うちのバンドの専属ギタリストに「Purple Rain」カバーしましょうよとリクエストしましたが難色を示されました。恍惚の表情でギターソロかましまくるとこ見たかったんだけどなー

 

高橋悠治 - "John Cage Sonatas And Interludes For Prepared Piano"

大巨匠でありながら作品が膨大すぎていまひとつその功績がつかみづらい高橋先生の名盤です。ジョン・ケージも大巨匠でありながら作品が膨大すぎていまひとつその功績がわかりづらい作曲家ですが(だいたいが4分33秒のイメージで終始してしまう)、こちらはアジア的パーカッシブな響きが大変楽しい曲が詰まった作品であります。ピアノ弦に釘打ち込むだけでこんな梵鐘みたいな響きするんか...という音色に対する驚きもありながら、禁欲的なまでに展開が少ない(音程の選択も全曲ほぼ同じなんじゃないかというくらい)はずなのに、独特の間とバラエティ豊かな鍵盤のタッチもあってか不思議とずっと聞いてられるアルバムです。他の演奏者による演奏とも比べてみるとより世界が深まるのかも。Spotifyはとっとこ高橋先生の作品群をもっとアップしなさいよ。

 

Ornette Coleman - "Chappaqua Suite"

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これも何故アップされてないのか謎です。ゴールデン・サークルでのライブでも共演した仲良しのリズムセクションの二人とファラオ・サンダース、そしてオケ隊を率いてオーネット先生が吹きまくる濃い作品です。映画のサウンドトラックを想定されたためかオケ隊のアレンジは確かにゴダールあたりの伴奏としても使われててもおかしくないような、まったく解決感のない和音を「ピャへ〜」みたいな感じでたまに弾いてるだけというのが面白いです。この伴奏のおかげで逆にオーネット先生特有の調性の間をフラフラしてるような演奏が逆にポップに聞こえてくるマジック。ゴールデン・サークルでのライブはバックにピアノ等のコード楽器なしで吹きまくるため一聴して何がなんだか...という気がしてましたが、このアルバムでの80分近い演奏を通して聴くとソニー・ロリンズ先生以上にコードに縛られず移調を繰り返す自由さこそがオーネット先生の魅力なんだなあと気づくことができました。

ちなみにファラオ・サンダース師はPart4でのみソロとってますが、相変わらずのフラッター多用しまくりの不気味ブロウで安心します。

 

Lou Reed - "Coney Island Baby"

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これもなんでSpotifyに抜けているのかよくわかりません...みんな大好きメタルマシーンミュージックはあるのにね。ぜんぜんルーさんのソロ作品は聞いてないんですけど、初期ソロ作品の猥雑さが抜け、落ち着いた渋い曲が揃っている好盤だと思います。アレンジが基本ギター2本+ベース+ドラムでごまかしの効かない編成のためほんのり緊張感が漂っているのもすき。白眉はタイトル曲でしょう。ボーナストラックにはタイトル曲のアコースティックバージョンも含まれておりこちらも甲乙つけがたいです。

 

Maceo and all the King's Men - "Doing Thier Own Things"

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メイシオさんは高校のときに"Funkoverload"を聞いてからずっと好きなんですけど、なかなかジェームズ・ブラウンのバックにいたときの活躍っぷりがほとんど把握できておりません(てゆうかジェームズ・ブラウンのアルバムをほとんど聞いたことないですしよく知りません、セックスマシーンの合いの手はメイシオさんが歌ってたと思ってたくらいなので)。このアルバムはジェームズブラウンバンドをストライキしてた時のアルバムだそうですが、逆にJBのファンクのノリをようやく掴めたような気がします。

JBのアルバムだとどファンクな曲の後にコテコテなソウルフルバラードが続いたりするのでそれがあんまり好きじゃなかったりするんですけど、こちらはそれがないので逆に曲風が統一されてて好きです。なんかこう、ミーターズとも似たような、個々の奏者の演奏は簡素ながらそれらが無機的に絡み合って結果的にとぐろを巻くようなサウンドになっているのが面白いですね。あとメイシオさんはすでに1stアルバムの時点に歌ってたんですなあ。

メイシオさんもなかなかSpotifyに作品が揃っておらず、名盤と名高い"Life on Planet Groove"はあるものの大名曲の「Shake Everything You've Got」が聴けないという大罪を犯しています。ふざけんな!(迫真)

 

The Tony Williams Lifetime - "Emergency!"

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ジャズロックとしては妙に不遇な扱いを受けてると思っているライフタイムですが、一番有名なこの1stだけSpotifyにないというのもなかなか不当な扱いです。

ジョン・マクラフリンがマイルスバンドにいた頃のキレキレなギター音が大好きなんですが、なかなかソロアルバムでもマイルスのアルバムでも長々と聴けないことがわかってきた(現時点で)のでこのアルバムでの白熱プレイは大変貴重に感じます。3人とも脂が乗り切ってる時期だったのか全曲ともソフト・マシーン顔負けなハードな曲ばかりで素晴らしいです(ソフト・マシーンと比較していいのかはわからないですが...)。残念なのは曲名見てもどんな感じでどんなリフの曲だったか思い出せないことですかね...トニーさん作曲の曲がほとんどを占めているのですが、マイルス黄金期バンドでもそうだったようにトニーさんはあんまり印象的なメロディを書くことには興味がなかったのかもしれませんね。めっちゃフリージャズやりたかったんじゃね?という憶測も見たことがありますし。でも名盤です。

 

Joni Mitchell - "Hejira"

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あえてジャコパス非参加の曲を。ながらくジョニ先生のイメージは"Blue"でのフォークの神髄的な世界か、"Mingus"でのジャズ名人をバックに従えた不思議音楽の世界しか知らなかったのですが、ストリーミング撤廃を期にもっと他の作品も聞きたい!と思い図書館で借りてみたところ趣味にバッチリ合いました。歌詞もすごいことになっているのでいつか手に入れて邦訳を読みながら聞きたい。

そういえば有名曲の「Coyote」は聴くたびにThe Bandのラスト・ワルツにて披露されたけどその場ではベーシストの某リックさんの手が追いつけなかったという悲しい話を耳にして以来、そのことばかり頭がよぎります。

 

dip - "Love to Sleep"

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dipもなぜかメジャー所属期のアルバムだけすっぽり抜け落ちててかなしい。インディーズ期のアルバムもキワキワのサウンド向井秀徳)でいいのですが、このアルバムは全曲メロディーがカッコ良くて何度も聴きたくなります。ヤマジさんの歌も「Sludge」「Lust for Life」でのヤマっ気のある感じ(本人はそんなつもりなさそうですが)だけでなくや「Love to Sleep」「Dear Prudence」での語りかけるような歌い方もあり表情豊かでどれもすばらしい。Sonic YouthとかMy Bloody Valentineとか私が大好きな90年代バンドのサウンドをオマージュとかパロディなんてレベルではなくしっかり消化し完全に自分流のロックンロールへ落とし込んでいるのがすごい。dipツイッター(というかほぼヤマジさんのツイッター)はいつも拝見させているのですが、いまだにサウンドや奏法やチューニングを研究し続けているとおり、ヤマジさんの探究心にはいつも驚かされます。このアルバムも当時のヤマジさんの探究の結果が昇華されているんじゃないかなあと思います(もちろんそれだけじゃないからこそここまでのものが作れたのでしょうねえ(畏怖))。

ずいぶん前にツタヤでヤマジさんの若かりし頃のソロアルバムを借りて聞いたときは全然ピンとくるものがなかったのですが、その時の曲がこのアルバムにいくつも収録されているため聴き比べると大変面白いです。「Water-colour」は当初こんなアコースティックなアレンジだったんか...とか発見が多い。

 

Zs - "New Slaves"

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ニューヨークの謎多き前衛器楽バンドZsの4枚目のアルバムです。なんかノイズ系の音楽を紹介してらっしゃるブログさんの記事で知ったんですけど、初めてこのアルバムの1曲目をYoutubeで聞いたときはおどろおどろしすぎてゾクゾクしたのを覚えています。幻惑性を排除しきったミニマリズム、サックスなぞはストリングスかと思うほどの過剰な音響処理、そして全曲とにかく音が暴力的にデカい。曲名からして様々なアメリカの暴力的な歴史やメッセージを内包しているのでしょうけど、私のような無知日本人にはその暴力サウンドからときおり顔を覗かせるサンプリングされた声や祝祭的なドラムからしか窺うことができないという。しかしながらそれすらも彼らのサウンドを構成する一部でしかないように感じるほどの凶暴な音楽です(メッセージを感じられる人はいるみたいですが。 レディオヘッドはともかくゴッドスピード・ユー・ブラック・エンペラー!をメロドラマ呼ばわりするのはかわいそうだと思う、あるバンドを褒め称えるのに違うバンドを引き合いに出して貶すのは極力...やめようね!)。嫌がらせと思わずぜひ聞いてみてください。

ちなみに私は日本限定の2枚組を買いましたが、あんまりリミックスはどれもしっくりきませんでした...JGサールウェルさんのおもしろリミックスは良かったですが。

 

ほかにもニール・ヤング師のライブアルバムとか借りたんですが、「わあどれもいい曲だな〜」ぐらいの感想しか今はでてこないのでまたそのうち書きます。