らなる堂

音楽

No.3 Thee Michelle Gun Elephant "チキン・ゾンビーズ"

速くも頓挫しつつある過渡期アルバム企画ですが、今回はミッシェルです。

正直このバンドはあんまり書くことがない音楽的な背景がうんぬん言うよりも実際に聞いてみてギターの音にガツンとくればもうOKみたいな感じがありますが、なんとか色々と書き連ねて見ようと思います。

 

前作"ハイ・タイム"以前は、よく言われていることとしてパブ・ロックとの方向性を感じるということでありますが、わたくしそんなに音楽に詳しいと言うわけではないので実際にYoutubeとかで聞いてみることといたしました。Dr.Feelgoodとかのタイトなギターバッキングや這い回るベースラインは確かに通じるものがありますね(知ったかぶり)。あとはブルース進行とか。コードはそんなに動かないですね。ノリとしてはパンクよりも横揺れを取り入れた感じでしょうか。この頃のバンドの特徴はやはりアベフトシ先生の鬼カッティングであります。「シャンデリヤ」とかイかれてます。16分のカッティングってだけでキツいのに、激しいポジション移動もあいまってだいぶ人間ばなれしたテクを要しそうです。「Blue Nylon Shirts」とかなんとなく爽やかな曲もありました。まだチバ師匠のダミ声はそこまで強烈じゃないです。Tom Waitsの1stレベル。

 

今作ではベースの音圧が上がりサウンドが重くなった印象があります。音質はすっごい荒いんですけどそれも狙ったものなんでしょう。ギターのバッキングもブラッシングがやや控えめとなり、四分を基調としたリフを主体とした演奏です。スカスカした感じはやや後退しています。とりわけ変化が感じられるのは「ブギー」でしょう。バースでコードが2つしか動かずギターとベースが8分弾きを延々と繰り返します。ギターソロも早弾きというわけでもなくノイズを主体とした形です。チバ師匠の歌い方もあってダルさがたまりませんね。

逆に前作と共通性が見いだせるのは「カルチャー」でしょう。「サニー・サイド・リバー」は爽やかさ担当です。次作以降はこういうのが聞けなくなってしまうのは寂しいですねえ...。「キラー・ビーチ」はなんか違いますし。

このように、サウンド全体においても、チバ師匠のボーカルにおいても過渡期にあったことがわかるアルバムです。ポップさやユルさを抑え、強面なロックへと近づいていく姿勢が感じ取れます。その中で「ゲット・アップ・ルーシー」「バードマン」などリフのセンスに恵まれた曲を生み出すことができたのが素晴らしいです。

 

次作であるみんな大好き「ギヤ・ブルース」は完全に強面です。ザ・不良です。

チバ師匠のダミ声が神がかっております。Tom Waitsの10thレベル。

 

...クハラ先生のドラムについては"カサノバ・スネイク"以降が好きです。キャリアを重ねるごとに鋼みたいに硬質な音になってます。

 

ハッタリノイズ(ニセ警告編)

アブナイWebサイトに行くと謎のポップアップとか企業のアフィリエイトととかに飛ばされますが、ここ最近ホットなのがニセウイルス感染表示であります。4~5年前なんてせいぜいフィッシング詐欺が関の山でしたが、この頃はやり方が巧妙になってきております。インチキ日本語ならまだ笑いですみますが、タブをロック(?)されるとなかなか腹が立ちます。

こんなこと書いてると私がそんなものばかり見てるように思われてしまいそうですが(実際そうなんですが)、こないだごくフツーのニュースサイト見ようとしただけで怪しい日本語アナウンスの流れるニセウイルス感染表示が出ましたので、そのハラダチを動力にハッタリノイズ曲を製作いたしました。

 

soundcloud.com

 

サンプリング音としてボイスをテキトーに切りはりしただけです。もうちょっと凝るべきだったかもしれません。警告音としてはもう一つ「ビーッビーッ」ていうブザーみたいなのがありますがそれをサンプリングしてもあんまりおもしろくなかったんでパスしました。

 

ドラムはGarageBandのDrummer先生です。ガレバンのドラムはシーケンスで製作できないのでやりにくいですがその分Drummer先生がそれなりにいいドラムを叩いてくれるのでありがたい。

ギターは相変わらずのハッタリです。早弾きができないんでノイズ任せです。

ベースは最近買ったもので、たまーに練習していますがまあ全然ダメです。これもへなちょこスラップまかせだし。半日練習したら人差し指にでっかいタコができたんでまともに弾けませんでした(言い訳)。

 

最初はAsa-chang先生みたいなボーカルチョップを試そうとしたのですが、文章のアイデアが尽きたんで途中で放り出したものを再使用しました。イメージとしては大友良英先生率いるInvisible Bandの「スイカを持って死んだ男の夜/ラジオのように」ですが遠く及びませんでした。ただうるさいだけです。

大友先生のギターノイズには知性と熱量があります。ホンモノです。あとドラムを担当する芳垣安洋先生もだいぶ人間ばなれした叩きっぷりを披露しています。

 

みなさまもニセ警告にはお気をつけください。もし当たっちまったら冷静にプラウザバッグかプラウザそっ閉じです。

 

音声ファイルはこちらのブログ様から拝借させて頂きました。ありがとうございました。

https://blogs.yahoo.co.jp/fireflyframer/33481665.html

セミを食べる妖怪

彡(●)(●) アカン...いつのまにか最後の更新から2ヶ月たってしまいそうや...

片手間で作曲の勉強とかしてみたりしてますけどやっぱり片手間でやるべきもんじゃありませんね。汎用的な進行がわかったところで、実際の楽曲においてコードの働きとか調べようとするととたんにわからなくなってしまいます。やっぱギターで作曲の勉強するのは根気がいりますね。テンションコードが全然覚えられへんのや。てゆーかいつもなんか勉強するときは音楽聴きながらというのが私のスタイルなのですが、音楽の勉強してる最中って音楽聞けないんで辛いですね

 

最近はLampさんというバンドに感動を覚えたのですけど、この人たちの曲のコード進行の凝り方は尋常じゃありませんね。安易に解決に向かおうとはせず、大丈夫かこれ?というくらい綱渡り的な進行を平気で使うもんですから恐ろしいですね。この方々はブラジル音楽を基調としつつ作曲スタイルの枠をどんどん拡大しているらしく、既存の進行からはみ出すことによる歪さ・危うささえも楽しんでおられるようにも感じます。また、こういったスタイルの方々のうち、ユニゾン的なキメも多用するアレンジメントを用いるバンドはなかなか少ないのでは。まだ「東京ユウトピア通信」しかレンタルして聞いておりませんが、はやく最新作の「ゆめ」も聴きたいですね。さち子の最終コーラスは私が聞いた男女ユニゾンボーカルのうち一番美しいです。

 

www.youtube.com

 

かといってSuper Fury Animalsの「Juxtaposed With U」のPVを見てウルっときちゃったりするわけなんですが、この曲ってヴァースもコーラスもⅣ->Ⅱ->Ⅴ->Ⅰ なのでものすごいオーソドックスなコード進行なんですよね。そりゃストリングスのアレンジとか、そもそもロボ声使う時点で反則とかそういうのもあるかもしれないですけど。正直そんなんでええんかと言いたくなりますが、泣けてきてしまうのだからどうしようもない。音楽ってとっても不思議ですよね(適当)。

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やっぱ編曲まで勉強すべきなんやろなあ...

No.2 キリンジ "DODECAGON"

キリンジの世界に取り憑かれたのはつい最近のことです。ツタヤでキセルの"近未来"を借りようと思い、「き」の棚に同じく置いてあった"3"を、「エイリアンズだけでも聞いてみるかあ〜」と借りて、先に"3"を聞いたらぶったまげました。それ以来キセルは全然聞いてません。ごめんなさい。"3"についてはまたそのうち。あれは恐ろしいアルバムなので。

 

6thアルバムの"DODECAGON"です。前作はこちらも大傑作な"For Beautiful Human Life"、次作はよりエレポップ気味な"7"です。

ジャケットは相変わらず二人の顔。

前作は堀込兄弟+冨田恵一体制の到達点でありました。堀込兄弟のギターが前面に出て、冨田先生の重厚アレンジ(打ち込みダブルドラムとか)はだいぶ抑えられたのが1st・3rdとの違いですが、「愛のCoda」「スウィートソウル」のストリングスやそこかしこで鳴る鍵盤で華を添えるようなアレンジをしています。この頃は泰行先生の歌声の表現力が増し(高樹先生も)まさに円熟といったところでした。

 

今作はセルフプロデュースですが、初の試みではありません。セルフカバーの「OMNIBUS」(こちらも必聴)で既に行われております。この「OMNIBUS」と前作ではなんとなく彼らのデビュー時におけるスティーリー・ダンなどをイメージするような、フュージョン・ファンクに接近したシティポップ感は薄れており、シンプルなバンドサウンドが押し出された形になっておりました。

 

「DODECAGON」初聞きで受ける印象はやっぱりエレクトロ化したということです。エレクトロ化の布石は既にマシュー藤井隆氏提供の「わたしの青い空」、高樹先生(現在唯一の)ソロ作"Home Ground"で打たれております(特に「絶交」「Soft Focus」)。打ち込みそのものは今までもバンバン使われておりましたが、いわゆるドラムマシンが彼らの作品に台頭するのは今作からです。2006年の作品というのもあってさすがにピコピコシーケンスとかオケヒットは使われてませんが、鍵盤の存在感は大きいです。次作"7"もエレポップな作風ですが、今作と比べるとだいぶ音数が絞られています。また、「自棄っぱちオプティミスト」のアコギカットアップなどはコーネリアスの影響もあるかもしれません("Point"は2001年)。"DODECAGON"は多層的なエレクトロニクスによるアレンジが特徴的です。

ただしそれは高樹先生の話です。泰行先生の曲は「ブルーバード」を除けばややエレクトロニクスは抑えめです。「鼻紙」「愛しのルーティーン」はアコギが主体的ですし、「CHANT!!!!」「Lullaby」はあくまでボーカルがメインに据えられた感じがします。どっちが上かという話ではございませんが、このあたりは兄弟のアレンジ作法の違いが窺えるようでもあります。

 

他に言えることとして、これまで高樹先生はディミニッシュ・オーギュメント・テンション・代理コードなどなどを惜しげなく使い(*1)ポップスの髄を極めたような複雑な曲進行を平気でぶち込んでくるのが特徴でしたが(そしてそれをサラリと歌いこなす泰行先生も恐るべし)、今作では多少シンプルな進行になっております。アレンジの手法を変える上で必要なだったことかもしれませんし、作曲についての方向性が変化したのかもしれません。まあ一番シンプルそうな「ロマンチック街道」もヒネったコード進行で不安定な雰囲気を醸し出してるあたりやっぱりポップ職人です。とりあえず4つ打ちなら何でもええやろの精神とは違う。

 

歌詞については…これまでの地雷のように埋まっていたメタファーやら、うっすらエロを感じさせるフレーズ、一見何を言いたいのかわからない難解さが大分薄れてとっつきやすくなったものと思います。もしかしたら「ロープウェイから今日は」にとんでもないメッセージが隠れてたりするかもしれませんが、その辺は考察の方々にお任せします。わたくしとしてはちょっと物足りないのですが。

 

そういう歌詞の面から見ても一番好きな曲は「Love is on line」です。ピアノとストリングスが美しい。キリンジバラードの一つです。ほとんどエレクトロニクスが使われてないところが泣ける。これで"君"がネカマだったらホントに泣ける。

 

そんなわけで次作からの彼らについては相対的に評価がやや落ちるところが多いのですが、敏腕プロデューサーのもとを離れて自分たちの音楽におけるアイデンティティを模索する姿勢は素晴らしいものでした。今作は、前作の濃厚さがないぶん、場面を選ばずに聞けるのが良いところであります。

 

 

  1. なによりこの人の曲をギター一本でやる上で難しいのは、2拍くらいでこの難しいコードがどんどん切り替わっていくことであります。「雨を見くびるな」のサビ、「愛のCoda」の全部(笑)など。匹敵するのは達郎先生くらいでしょうか。泰行先生もテンションコードはあまり多用しない程度でコードの切り替わりは結構早いです("牡牛座グラフィティ"、"繁華街"など)。

No.1 スガシカオ "4 Flusher"

14歳の時にわたくしは彼の音楽に触れ、恐ろしいまでの影響を受けました。自分語りはまた今度したいと思います。

スガシカオ先生の "4 Flusher"です。前作は"Sweet"、次作は"Sugarless"です(オリジナルアルバムとしては"SMILE"があたります)。前作では森俊之先生のシンセ/キーボードによる壮大なサウンドながらスガ先生の濃いファンクネスが詰まった作品です。次作は打ち込みドラムを多用し、スガ先生のギター/ベースが主体となったクールな作品になります。

"4 Flusher"は"Sweet"よりの、どちらかといえばシンセのサウンドが目立ちます。曲を見てみましょう。

1~3曲目はまさしく前作を引き継いだ、スガ先生の乾いたエロティシズムが魅力です。「性的敗北」なんて直球です。親に聞かせられません。この「かわりになってよ」~「性的敗北」は男の情けなさやらズルさがモロに現れています。「かわりになってよ」はアコギのカッティングが印象的ですね。この辺はスガ先生の得意分野です。ノリの軽さが笑えます。

「ミートソース」でギトギトのギターを弾いてるのは佐藤タイジというお方のようです。今後チェックしていきたいと思います。

 4曲目からは「青白い男」を除けば打って変わってメロウだったり、ポジティブだったり、ナイーブだったりします。

「Affair」はメジャーデビュー前の音源をYoutubeで聞いたことがありますが、ジメジメとしたアレンジで、素晴らしいほどの救いようのなさでした。

このアルバムに収録されているものはアレンジが異なり、オルガンからわかるとおりちょっとレゲエのリズムになっています。ホーンアレンジが素晴らしい。

 「Spirit」は非常にギターが快活な曲ですが、個人敵にはやはり「そろそろいかなくちゃ」のうだつのあがらない歌詞が良いですね。自分を変えなくてはならないと気づいていながらも"そろそろいかなくちゃ"と呟き、何となく忙しいふりをして誤魔化すようなどうしようもなさが表れています。

「たとえば朝のバス停で」「木曜日、見舞いに行く」のユルさもたまりません。歌詞に秘められた思いは対照的なものですが。

 

総合すると、ポジティブな曲/ネガティヴな曲が混在してアルバムとしての流れはなんとなく悪いように思えますが(これこそ過渡期アルバムの魅力なのですが)、この時期のシカオ先生の歌詞のエグさ・表現性はやはり眼を見張るものがあります。男のダメな部分を歌わせたら正直この方の右に出る人はいないんじゃあないでしょうか。異論は認める。

先述した通りアレンジはまだまだシンセの目立つ音をしていますが、「たとえば朝のバス停で」は土臭さもなんとなく感じます。バンド形態の導入というのは、かつての90年代Jポップからの脱化としての一つの流れであったかもしれません。プレイヤーとしての側面が再び聞き手に受け入れられ始めたのはこの頃だったんでしょうか。この辺について私はまだまだ勉強が足りません。またそのうち。 

とりあえずこのアルバムはシカオ先生の色んな側面が垣間見えます。良曲が多いので、ぜひ。

過渡期

底の知れた人間であるわたくしは時間の無駄遣いが好きなのでダラダラと文章を書くのです。まあ、暇人というわけですね。ほんとはやること一杯あるわけなんですけど。

なんとなく便所の落書きレベルでも書いておけば誰かの目に止まって新しい見解が...みたいなことがあれば良いと考えています。まあ、友達がいないわけですね。端的に言うと。

 

言い訳病も大概にいたしまして、ここでは音楽についての書き置きをしたいと思ひます。いろいろな音楽家の作品を偏愛しとるわけですが、(題材的に描きやすい)アーティスト/バンドにおける「過渡期」の作品について取り上げていければなと思います。

といっても、こーいう作品について何か言葉を添えるためにはそのアーティスト/バンドの作品をだいたい網羅しておかなければならないので、数は限られるわけなんですが。

 

The Beatlesまでくると全部過渡期で全部傑作みたいなものなので何も言えないわけなのでその辺は気が向いたらという形です。