らなる堂

音楽

ヤバババババババババ

あんまり"ヤバい"という言葉ばっかり使うのはどうなんでしょと思う事があります。このCDまじヤバいぞとか、本当にヤバいから来て欲しいとか。10年前から言われてることではあるんですけどね。"ヤバい"という言葉は別に嫌いなわけじゃなくて、"ヤバい"という言葉を使うとき、一体何が"ヤバい"のかを説明して欲しいと思う時があるんです。なんでこんなこと気にかかってんのかわかんないし、別に世に訴えるつもりもないんですけどね。そもそもこんな軽薄そのものな人間が何いってもしょうがないとは思いますが。まじヤバい。

 

ブログをしょっちゅう放置しておりますが、書くことがない…というわけではなく、ふとした時に「これ書こう」と思ったことがあっても、パソコンのまえに座りいざ書こうとすると、そのネタを忘れているのですね。ブログ名を鳥頭日記にでも変えた方が良いかもしれません。

同じよーなことはそれ以外にもあって、常日頃悩みを抱えているはずなのに、いざ人に「悩みとかないの?」と言われると思いつかなくなる現象があります。そして一人になった後であーこれ打ち明けるべきだったなーと後悔するところまでがセットになっています。打ち明けたところで結局しょーもない悩みだと気付かさるんですけどね。
今の悩みはシールドが断線したんで新しくシールドを買うべきか半田付けセットを買って自前で直すべきかということです。しょーもな。半田付けなんて中学校でちょっとやってから触れてないです。無類の不器用なんで火事起こしてもおかしくありまへん。でも2年でシールドって断線しますかね? 正確には断線というより、プラグと銅線を繋ぐはんだが取れちゃったみたいな感じなんですけど、保管の仕方が悪かったんでしょうかね~。確か私が持ってる中で一番高いやつだった気がするんですけど、物持ち悪いですね~。

 

またエフェクターを買ってしまった。ろくに弾けないくせに音だけ重視してどうすんねんと思うんですけど、安くなってるとつい飛びついてしまう。あと買うのはpolytune3(高性能チューナーペダル)くらいにしたいと思ってるんですけど、やっぱりDyna Compも欲しいなあ...と思って中古楽器のサイトを練り歩く毎日です。金がいくらあっても足らんぞ。ええ加減にせえや。

ジミヘンみたいな音を志向してるつもりなんですけど、ファズの世界は泥沼ですね。

 

コミュ障が重症化しておりまして、レジで店員と話すだけで冷や汗が出て来たりしています。いやあここ最近めっきりそんなことなかったんですけど、なんで急に神経衰弱になるのかわかりません。昼夜逆転生活も脱したというのにねー。ほんと面接とかやったら死ぬんじゃないのかと不安に。なります。はい。

 

唐突な自分語りでした。

ここ何ヶ月かの記録#2

意味もなく深夜まで起きているのは百害あって一利なしなのでやめましょう。なんでもいいから自分の思ったこととか感じたこととかを文にするリハビリ(?)でもすれば少しはコミュ障も改善されるかと思ったんですけど、こうやって時間をかけて文を作るのと、実際に人に会って話すということは経る過程が違うのであって、あんまり意味ねえなコレと思いました。デリダみたいな話ですね(適当)。

 

Jim O'rourke / All Kinds Of People -love Burt Bacharach-

ジム先生監修のバカラックトリビュート集です。ジム先生も演奏に参加してます。一曲歌ってます。バカラックの音楽は日常に忍び込んでおり、「あっこの曲かあ!」みたいになることが多い...と思ったんですけど、わしは"Close to You"しかわかりませんでした。超クラシックな存在を抜かしていることがよくわかりました。ジム先生のバカラックのカバーは名作Eureka収録の"Something Big"がありますが、あそこまで完コピではなく、ゲストミュージシャンの感性を生かした出来になっております。世界の細野晴臣歌う"Close To You"から至福です。次の"Always Something There To Remind Me"はSonic Youthのよしみかわかりませんがサーストン兄貴ですね。Sonic Youthよりかはソロ活動でのアコースティックなアプローチに近いでしょうか。まあバカラックでノーウェーブ感丸出しじゃどうしようもありませんしね。味のある歌唱です。坂田明先生と最近ムロツヨシっぽくなってる中原昌也先生参加の"After The Fox"は面白い。坂田明先生の語りが非常に面白い。中原昌也はコーラスに回っておりますが、ジム先生と一緒に歌ってるせいで判別が難しい。青山陽一先生歌う"You'll Never Get To Heaven"も良いです。コレ聞いて彼のCDを集め始めました。間奏とアウトロに入る音数の絞られたスライドギターがしぶい。

さて、このアルバムの難点はB面がやや地味ということです。個々の曲のアレンジはもちろん違いがあるのですが、"Do You Know~"から"Raindrops Keep~"とテイストの似通った曲が並んでおり、どれも普通に良い曲で、無難に歌が上手い方を起用しているのでその無難さがちょっと退屈ではあります。面子が面子なだけにしょうがないかもしれませんが。

その3曲を抜けるとYOSHIMI姉貴歌う"Say A Little Player For Me"です。この曲はすごいですよ。ハツラツと歌うYOSHIMI姉貴。Boredomesで奇声をあげラッパを吹き鳴らしていたYOSHIMI姉貴はいずこへ。そして後半は心地よいアコギのアルペジオと柔らかなノイズの饗宴です。金属音やパーカッションの演奏はドラム怪人グレン先生によるものですが、一発録りらしい。どうかしている(褒め言葉)。

ジム先生が自ら歌う"Planes Boats And Trains"はなんとなくイーノの空港音楽とかR.E.Mの"Airportman"を彷彿とさせるアレンジです。リヴァーブかけたピアノのせいでしょうか。他の曲と比べるとかなり無機質なアレンジですねえ。

地味な曲もありますが、全てはゲストミュージシャンの歌の魅力を引き出すための策なのでありましょう。歌の入った作品ではアバンギャルド性が控えめになるジム先生らしいです。ジム先生とミュージシャン間の交流も垣間見られるようで面白いです。

 

 


OTOMO YOSHIHIDE INVISIBLE SONGS / SORA

あまちゃんOSTを除けばTSUTAYAに置いてある大友先生の作品はこれくらいでしょうか。渋谷とか行けばもっとあるかもしれませんが。サントラ、ジャズ、ノイズと多様な活躍をなさっておられ、良い曲が作れるノイズミュージシャンというほぼ最強の立ち位置におられる大友先生ですが、今作はボーカル中心の作品です。しかしながらボーカルといってもまともなボーカルなんて"Sora"と"自殺について"(導入部だけ)くらいです。それ以外は絶叫、先生自らの語り、"Banka-La"におけるSAN値ゼロ状態の山本精一先生による歌唱など。SAN値ゼロ状態の山本精一先生の歌唱は彼のソロアルバムでは聞けないので貴重です。

演奏はナスノミツル先生と芳垣安洋先生の鉄壁のリズム隊が構えておられます。Alfred Harthという方がサックスを吹いているようです。こちらもなかなかの絶叫っぷりです。

非常に爽やかなジャケットのアルバムですが、このイメージに即しているのは"Sora"くらいです。この曲では大友先生がロックの語法に忠実な演奏をしていて面白いです。この後の曲ではノイズ炸裂なだけに。15分弱の"スイカを持って死んだ男の夜/ラジオのように"は、ラジオ等によるノイズコラージュから一変してBrigitte Fontaineの"ラジオのように"の主題を破壊/再構築しつづけるフリージャズセッションへ。ナスノミツル先生と芳垣安洋先生はこの手の半即興セッションにおいて最強のコンビなのでは。堅実なリズム隊の上で大友先生のギターと切り刻まれたかのようなAlfred Harthのサックスがのたうつ。近藤達郎のエレピが電化マイルスっぽさを醸し出す。迫力の15分弱。

"Watermelon"はダブです。ここでもAlfred Harthのサックスが炸裂しとりますが、"スイカを持って死んだ男の夜~"の後だとやや地味か。ワウギターの奏法は参考になるかもしれません。お家芸フルアコ+U字型金属によるノイズの"センチメンタル・ジャーニー"に続く "自殺について"は今作のもう一つのハイライトでしょう。鉄の雨が降りしきるような絶望の音楽です。

こんな感じで大友先生のエッセンスがぎっしりと詰まった作品です。楽しいサントラばっかつくっとるんちゃうぞ、ほんとはもっとすごいことやっとるんやぞ、ということを嫌というほど理解していただけるのではないかと思います。大友先生の"真"の入門版かもしれません。たぶん今作でカバーしきれてないのはFilamentなどの静寂なフリーインプロの活動でしょうか。こちらもぜひ。

 

ままならん

なんだか夢中夢みたいな夢を見まして、深夜1時くらいに目が覚めた気がして、なんでこんな時間に電子レンジの音がするんやと思った瞬間に覚醒し、本当は18時でしたという現象が生じました。昨日は深夜までバカなことに費やしたせいでしょうか。VirtualBoxWindows入れても大して使い道ないのにね。

それでまあ深夜1時になってしまいました。

曲のアイデアとかがなんも浮かんできませんねえ。エフェクターのセットがだるくてあんまり録音とかする気にならない。

やらなきゃいけないことは行き詰まってしまいました。3月のイベントが終わってから完全にガス欠状態です。あかんなあ。

人間やめときな'18

・パターソンにちょろっとだけRoky Eriksonの"Gremlin Have Pictures"が映ってたんで思い出したようにCD棚から引きずり出してまた聞いて見たんですけど、割とハードッロク臭が強くてあんまりしっくりきませんでした。まあ買って最初に聞いた時もしっくりきてなかったんで印象というのはなかなか変わらんものであります。アシッドフォークっぽい曲は好きなんですけど、13th Floor Elevatorの時みたいなヘロヘロ酩酊状態みたいなのが無くてちょっと面白くないという感じです。ボーカルが割と力強い。ヴェルヴェットアンダーグラウンドのヘロインのカバーは13thの雰囲気残してる感じがありますね。まあ駄作ではないです。このアルバムには参加してませんが、トミー・ホールには長生きしてほしいと思っております。

 

・いま色々書いてて思ったんですけどバンド名の表記がカタカナとか英語とか混じっておりますね。このブログ始めた当初は全部英語で統一するつもりだったんですけど、だんだんどうでもよくなってきたというわけです。お許しください。

 

エレキギターでバッハ弾くのってたのしいれすね〜まあろくに弾けもしないんですけど。しかもTab譜です。Tab譜の弊害を何度説かれてもやっぱりTab譜の魅力というのは抗い難いです。そんな薄っぺら男が今日クラシックギター用の五線譜と向かい合ったわけなんですけどさっぱり読めませんでした。運指と五線譜に書かれてる音符が一致してないように見えるところもあります。ドレミファソラシドなんて5・6弦しかわからないので道のりは長いですね。

 なんでこんな唐突なことを始めたかといいますと、敬愛するMarc Ribot先生が最初はクラシックギターから始められたそうだからです。

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Tom Waitsの"Rain Dog"のような怪しさ満点のリードプレイも最高ですが、この御仁は独奏でジャズでもなんでもやってしまわれる人なので、一本のギターでバッキングとリードを演奏してしまうようなことができればいいと思ってるんです。人生何回やり直したら到達できるんでしょうか。

 

鈴木茂先生

鈴木茂先生の自伝「鈴木茂のワインディング・ロード」を読みました。

写真がいっぱい載ってて楽しかったです。

...小学生の絵日記みたいな感想はよしましょう。

自分の生い立ちから、はっぴいえんど、ソロ活動、アレンジャーとしての活動、最近の活動や考えていることが書かれております。はっぴいえんど時代の三作とBand Wagonについては一曲一曲ずつ先生からのコメントが書かれております。何に影響を受けたかとか何の曲をイメージしたかなどですね。それ以後のアルバムや他の参加作品についてはそんなに言及されておりません。それはちょっと惜しい点ですね。

 

youtu.be

先生の機材の組み立て方はこの動画でも十分説明されているんですが、今回読んだ自伝でも非常に詳しく書かれております。先生のペダルボードを調べるとヴォリュームペダルムが2つとか3つとかあったりしてかなり異様なんですが、これは先生のギターのスタジオにおけるタブルトラック録音をライブでも再現したいと言う哲学の表れだったんですねえ。

先生ははっぴいえんど時代はファズを聞かせまくってギャンギャン鳴らしてるタイプのお人だったのですが、だんだんとクリーントーンを主体とした音作りをするようになっております。「ポップな歌モノなんだけどギターのリフがしっかりと曲を構成している音楽」を追求するスタイルははっぴいえんど以後は顕著ですね。

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こーいうスタイルから、

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こーいうスタイルです。

単純なリード・ギタリストとしてではなく、はっぴいえんどを経たことでよりアレンジャー的な視点が深まったということでしょうか。ティン・パン・アレー時代は先生のいろんな演奏スタイルが窺えて非常に勉強になります。

 

そんでまあ、この自伝は80年代に先生がどのように編曲家という仕事を主体に写していったのか、どんだけ苦労したのかについてもよく書かれておりますが、その編曲を行なった個々の作品についてはほとんど記述されておりません。調べてみたらこんなサイトがございました。はえ^〜すっごい。美川憲一とかあります。鈴木茂 編曲作品リスト 

最近Spotifyをあさってみて面白かったのは佐々木好という方の曲です。

ほげっ...ニコニコ動画しかあらへん。

ストレート 佐々木好 by kosaku 音楽/動画 - ニコニコ動画

鈴木茂といえばストラトorサンダーバードですが、ここではアコギを弾いておられます。ここでもリードプレイが冴えております。ソロも良いですね。

 

この佐々木好という方の話になってしまうんですが、「80年代の歌謡曲」というジャンルには括りにくい世界を持っておられます。あまりにもしみったれているというのもありますが、歌詞が非常にパーソナルなんですよね。正直ゼロ年代になって目立ってきた自意識過剰な日本のロックの歌詞と共通するところもある気がするんですけど、深刻さが違うんですね。曲作りも面白いです。

 

先生の話に戻りますが、いまだにソロアルバムを聞いておりませんので、とっとこ手にいれたいと思っております。

自伝で他に印象的だったのは、スライドギターについて、ライ・クーダーのスタイルが真似しようと思い結局挫折してしまったが、ローウェル・ジョージのプレイを聞いてもう一度挑戦してみたことです。わたくしも2日で挫折した人間ですが、リトル・フィートを聞いてもう一度自分を奮い立たせてみようと思います。だって小指疲れるんですもんボトルネックって。

とりあえずこれからも研究していきたいです。

おだいじに

iPhoneのイヤホンをつなぐケーブルが断線しました。ニールヤング聞いてる途中でした。またケーブル買うのも癪なんで、思い切ってbluetoothにしました。しかし、発送されるまで時間がかかる、ということで10年前のウォークマン(4GB)を引っ張り出して使うことにしました。

当時のウォークマンというのはSonicStageやらXアプリを使わんと曲を入れられないんですが、どちらもサービス終了してて笑うしかありませんでした。アーカイブサイトにXアプリの残骸があったんでどうにかなった...と思いきや、なぜか曲が入らない。なんでや、ファイル形式も大丈夫だし、容量もあるはずやぞ、と色々確認したのですが、結局経年劣化ということであきらめました。一度階段から落としたりしましたし、バッテリーも全然持ちませんから、もう捨てるべきなんでしょうけど、なかなか手放す気になりませんねえ...音楽の趣味は10年前とそんな対して変わってませんでした。

 

花粉症が治りません。もうマスクつけたくないんじゃあ。

 

冬目景先生の羊のうたを読みました。吸血(吸血鬼ではない)をテーマにしている漫画ですが、バイオレンス性が希薄であり正直地味です。地味ですけどグイグイ引き込まれてしまいました。「あなたが生きているからわたしは生きていられる、だからあなたもわたしのために生きてほしい」という思いは普遍的かつ強力に訴えかけるものがありますね。読みおわった時は割とハッピーエンドじゃんと思ったんですが、今思い返すと結構救いのない話です。でも鬱ではない。八重樫さんは天使です。

 

鈴木茂の1stが唯一置いてあった記憶のあるツタヤに行ったら、いつの間にか商品配置が変わっていてCD棚が縮小しており、お目当のものも無くなっておりました。見つけた当時になぜ借りずにリリースしてしまったのか...たしか「借りてもどうせ大して聞かないやろ」とか思ったからだっけなあ...どころがどっこい今聴きたくてたまらないんだよなあ...どんな時でもチャンスを逃してはいけません。細野さんのCDもついでに一掃されておりました。ひでえ。代わりにラリー・ヤングの1stがあったんで、それで勘弁してやることにしました。音楽界への風当たりが強いですね。

The Catastrophist / Tortoise

ブログのネタにするには結構時期がはずれた盤ですが、まあ適当に。

 

この作品、どうでしょう。わたくしは当然ながら酷評する気はございません。いつもどおり何が言いたいのかわからないことだけ書いておきたいと思います。

トータスのファン/聴き手はトータスというバンドに何を求めているのでしょう?"ポストロック"というあまりにも甘美ながら、非常に曖昧なジャンルに(不本意だとしても)括られながら、いまだに歩みを止めることのない彼らは偉大な存在であると思います。しかしながら、それゆえに迷いが生じているということも彼らは隠すことなく示してきたと思うのです。それは前作の「やっとアイデンティを見出したんだ(笑)」という言葉に表れるように、「トータスという以外何物でもない」という音楽を生み出すのに苦戦しているのでは、と考えます。

前々作の"It's All Around You"は最初にその苦難とぶつかった作品ではないでしょうか。壮大な世界を感じさせるようなサウンドスケープシンセサイザーの大胆な導入、"Dot/Eyes"にみられるようなジェフ・パーカーによる大胆なギターノイズ、彼らは今までの自分たちを超える音楽を作り出そうとしていました。しかしながら、私はこの作品は5回くらいしか聞いておりません。

正直パッとしないからです。

結局のところ、我々は2ndと3rdの焼き増しを願っているというわけでしょうか。んなことは無いと思います。わたくしは前作"Beacons of Ancestorship"が大好きです。爽快な"Prepare your Coffin"、リズムへの執着が生み出した"Gigantes"、ダグ・マッカム節全開な"The Fall of Seven Diamonds Plus One"などなど...正直"It's All Around You"よりも賛否両論だった本作ですが、過去の焼き増しやら原点回帰などとは揶揄したくない作品でありました。トータスの魅力のひとつであるサウンドのソリッドさが非常によく現れた作品です。

わたくしがトータスを聞くのは、ポストロック云々がどーたらということよりも、ドラム、ベース、ギター(ときどき鍵盤・木琴)による演奏者としての主張を極力排した演奏や、ライヒやラリーのようなミニマル性の強い曲想でありながら、どこか熱を帯びた面を感じさせ、ほのかに温かみのあるメロディーに心を打たれる、わたくしがトータスの作品を聞くのは、そういった瞬間を感じてきたからです。

じゃあ今作はどうでしょう。 うーん...

どうも、前々作以前から感じられるこのパッとしない感じは、シンセサイザーの多様に起因している気がします。"The Catastrophist", "Ox Duke", "Gopher Island", "The Clearning Files", "Hot Coffee"が絶対に彼らにしかできない、作れっこない音楽だとは言い難いと思います。まるで80年代のシンセのような、ちょっと安っぽいこのサウンドはどうでしょうか。4thアルバムの"Blackjack"も確かにシンセが重用されていましたが、それよりも勢いが優っていた曲でした。しかしながら今回のシンセの使い方は、彼らのソリッドなサウンドを中和し、個性を失わさせてしまうようなものに聞こえます。別に彼らはギターバンドではありませんし、"Gesceap"はシンセでなくては魅力が損なわれてしまう曲です。おそらく、"Gesceap"はシンセをメインに据えたからこそできた曲ではないでしょうか。なだらかなシンセに、ゴリゴリのファズベースがからむ後半の展開は快感です。このアルバムのハイライトだと言い切れます。

が、"Ox Duke"のストリングスはどうでしょうか。"Hot Coffee"のリードシンセはどうでしょうか。*わたしが聴きたい*トータスのサウンドはここにはありません。

さて、散々文句を言ってきましたが、B面はわたくし結構好きな曲が多いんです。緊張感溢れる"Tessract", ギターのストロークが涼しげな"At Odds With Logic", そして 新境地"Yonder Blue"。そりゃあわたくしがヨラ天大好きなのもありますよ。しかしながら、メロディーメイカーとしての彼らの魅力に溢れすぎた曲です。正直ソリッドさとかどうでも良くなります。歌詞も良いんですよ。

水平線上の太陽の色は とっくに褪せてしまう

夜がやってくるにつれ

でも明日には再び輝くでしょう

わたしはあなたに会いに行こう

その日こそあなたに会いに行こう

 

あなたに会えるまで 涙で海を満たすでしょう

あなたに会えるまで

涙の海に消えるでしょう

あなたに会えなければ

あなたに会えなければ

 

星がまた輝きだしたみたい

星はいつも宇宙にあって 月の周りを巡る

あの幻のような月は わずかに青く光ってる

でも明日になれば 輝きを放つでしょう

あなたに会えた時こそ

正直次作は全部歌入りでもええんちゃうかと思いました(Brave & The Boldは未聴)。

ということで、このアルバムは"Gesceap"と"Yonder Blue"で十分元が取れます。

 

(少なくとも私が)彼らに望んでいた魅力を、彼らは自分たちで壊しに、今度こそ本気で壊しにかかっているのかもしれません。だからThe Catastrophistなのかもしれません。彼らが確信犯的に安っぽい使い方をした可能性も十二分にあります。しかし、The Sea and Cakeはモジュラーシンセを導入することで再び新たな魅力を備えました。まだまだやれるはずですシカゴ音響派(死語)。頑張れ。

 

(追記)

The Sea and Cakeの次作は3ピースやって!?

うせやろ...いつエリックさん脱退したんや...